
肺炎球菌や大腸菌、インフルエンザウィルスや新型コロナウィルスなど、私たちの健康を脅かす存在としてよく耳にする「菌」と「ウイルス」。どちらも「病気の原因」として知られていますが、その正体や性質はまったく異なります。
本記事では、「菌」と「ウイルス」の違いを分かりやすく解説し、それぞれが引き起こす病気や予防法についてご紹介します。「なんとなくは知っているけど、詳しくは知らない」という方にぜひ読んで頂きたい内容です。
目次
菌(細菌)とは?

細菌の正体
細菌は「単細胞生物」と呼ばれ、自分自身で栄養を取り込み、エネルギーを作り、分裂して増えることができる生物です。大きさはおおよそ1マイクロメートル(1mmの1000分の1)で、電子顕微鏡を使えば形を見ることができます。
健康に役立つ細菌もある
すべての細菌が悪者というわけではありません。腸内にいる善玉菌や、発酵食品(ヨーグルトや納豆など)を作る菌も細菌の一種です。人の健康に役立つ存在でもあるのです。私たちの口の中にも数百種類、数千億個以上の細菌が常在しているといわれています。これらの細菌の多くは常在菌と呼ばれ、普段は悪さをしませんが、バランスが崩れると虫歯や歯周病の原因になります。
悪さをする細菌
人の健康に役立つ細菌がいる一方で、病原性を持つ細菌も存在します。
- 肺炎球菌:肺炎や中耳炎の原因
- 大腸菌の一部:食中毒の原因
- 結核菌:結核の原因
- ミュータンス菌:虫歯の原因
- ポルフィロモナス・ジンジバリス:歯周病病原菌
抗生物質によって多くの細菌感染症は治療可能ですが、近年では「薬剤耐性菌(やくざいたいせいきん)」と呼ばれる抗生物質の効かない菌も増加しています。
ウイルスとは?

ウイルスの正体
ウイルスは「生物ではない」とも言われるほど、細菌とは異なる存在です。自分では増えることができず、人や動物、植物など他の生物の細胞に入り込んで、その細胞の仕組みを使って増殖します。大きさは細菌よりもはるかに小さく、約0.02〜0.3マイクロメートル。細菌を見るときよりもさらに高倍率に設定した電子顕微鏡でなければ見ることができません。
ウイルスが引き起こす病気
- インフルエンザウイルス:インフルエンザ
- ノロウイルス:急性胃腸炎
- ヘルペスウイルス:口唇ヘルペス
- 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2):COVID-19
ウイルスには抗生物質は効きません。治療には「抗ウイルス薬」や「ワクチン」が用いられます。ウイルスは通常、口から体内に一時的に侵入することがあります(例:インフルエンザウイルス、ヘルペスウイルスなど)。ただし、ウイルスは口腔内に常在するわけではなく、細胞に感染して発症します。
菌とウイルスの違い

菌(細菌)とウイルスの違いは、大きさ・構造・生きているかどうか・増え方・治療法など、さまざまな点で異なります。菌(細菌)は自ら栄養を取り込み、分裂して増える生き物で、抗生物質が効くことがあります。一方、ウイルスは生物ではなく、他の細胞に入り込まないと増えられません。抗生物質は効かず、ワクチンや抗ウイルス薬で予防や治療を行います。どちらも感染症の原因となるため、正しい知識と予防が大切です。
感染予防のポイント

共通する予防方法
菌にもウイルスにも共通して言えるのは「感染を広げないこと」が大切だということです。
- 手洗い・うがい:基本中の基本ですが、非常に効果的です。
- マスクの着用:飛沫感染の予防に。
- 換気:室内の空気を清潔に保つために有効です。
菌に対する予防

- 食品の加熱や保存方法を工夫する
- 清潔な環境を保つ(特に調理場やトイレなど)
- 抗生物質の正しい使用(必要以上に使わない)
ウイルスに対する予防

- ワクチン接種(インフルエンザ、コロナなど)
- 症状が出た場合は早めに受診し、適切な治療を受ける
- 他人への感染を防ぐ意識(咳エチケット)
口腔内細菌には口腔ケアが大切

口腔内細菌の感染予防のためには、正しい歯磨きと定期的な歯科検診が重要です。毎食後の歯磨きと、特に就寝前の丁寧な歯磨きを心がけ、歯間ブラシやデンタルフロスも活用しましょう。また、歯石(歯垢が石灰化したもの)ができた場合は、セルフケアで除去することが難しいため、歯科医院でのプロフェッショナルケアが必要です。自宅でのセルフケアと定期的な歯科検診(3ヶ月に1度を目安)を両立させて、口腔内を清潔に保ちましょう。
5. まとめ
「菌」と「ウイルス」は似て非なる存在です。それぞれの特性を理解することで、予防や対応策をより効果的に選ぶことができます。感染症が気になる季節や、体調を崩しやすいときこそ、正しい知識を持つことが健康を守る第一歩です。
病気のリスクを減らすためにも、口腔ケアをしっかり行ってお口の中を清潔に保つことが大切です。細菌は、口蓋や舌の表面にも潜んでいるので、歯だけでなく舌や粘膜の清掃もしっかり行いましょう。
ぜひこの記事を参考に、ご自身やご家族の健康管理にお役立てください。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史
岸和田のかかりつけ医、この町の歯医者さん堀内歯科
東岸和田駅から徒歩約7分
〒596-0825 岸和田市土生町6丁目10-8