歯の変色には、歯の表面に色素が付く「外因性」のものと、歯の内部が変色する「内因性」のものがあります。
「外因性」の一つである色素による着色(ステイン)は、飲食物に含まれる色素やタバコのヤニなどが歯の表面に固着したもので、歯の黄ばみなどの原因になります。
目次
着色汚れが起きるメカニズム
歯の表面は、ペリクルという唾液の保護膜によってコーティングされています。このペリクルは歯を酸から守る一方で、飲食物の色素と結びつくと着色(ステイン)の原因になってしまいます。そのため、色素が沈着する前に歯磨きケアで着色を予防することが大切です。もし、歯のケアが行き届かないまま着色の蓄積が進んだ場合は、歯磨きだけで汚れを落とすのは難しくなります。
主な外因的要因
◉色素による着色(ステイン)
食べ物や飲み物に含まれている色素などが歯の表面に付着して沈着します。特に、清掃不良の場合は着色がしやすくなります。着色しやすい飲食物の摂取後は、歯磨きや口をゆすぐなどして色素沈着を防ぎましょう。
【着色しやすい飲食物】
- コーヒー
- 緑茶や紅茶
- 赤ワイン
- コーラ
- ベリー系のフルーツ
- カレー
- 色の濃い調味料
- チョコレート・・・など
◉つめ物やかぶせ物の劣化による着色
過去に歯の治療に使用した金属のつめ物やかぶせ物が劣化して金属成分がしみ出し、歯や歯ぐきに黒っぽい色がつくことがあります。また、レジンと呼ばれる白いプラスチック素材のつめ物は、時間とともにに変色する性質があります。
◉虫歯
虫歯のなり始め(初期虫歯)の部分は、通常の歯より白っぽくなりますが、進行すると歯に穴があき、肉眼では黒っぽく見えるようになります。
◉色素産生菌による着色
色素産生菌とは、口の中に存在し、色素を作り出す細菌です。口腔内の清掃不良の場合、この色素産生菌によって着色(黒色、オレンジ色、緑色)することがあります。
主な内因的要因
◉加齢による色の変化
加齢によりエナメル質が薄くなると、その中の象牙質の色が透けて見えてしまいます。象牙質は黄色っぽい色をしていますが、加齢によって透明なエナメル質は少しずつすり減っていく反面、内側の象牙質は厚みを増すため黄色味が強くなります。
◉抜髄(神経を取る処置)による変色
歯の中央には歯髄(神経)がありますが、虫歯などで歯髄を取る処置を行った場合、治療後2〜3年経つと、白色だった歯が、茶色、茶褐色、黒色と変色が進んでいくケースが多いといわれています。
◉抗生物質(テトラサイクリン系)による変色
歯の形成期にテトラサイクリン系の抗生物質を服用することで象牙質の変色が起こり、歯の色がグレー系に変色する可能性があります。その他にも、歯の形成期中にある種の全身疾患にかかったり、エナメル質や象牙質の形成に異常が生じたりすると歯の色が変色することがあります。
着色(ステイン)ケアの方法
ステインは長い年月の間に蓄積されるため、毎日のケアで蓄積させないようにすることが必要です。
研磨剤配合の歯磨き剤で歯磨きをする
研磨剤の配合されている歯磨き剤を使って歯磨きをすることで、毎日の食事で歯に付着した汚れを落としやすくしてくれます。しかし、汚れがなかなか落ちないからといって、力を入れすぎてしまうと、歯の表面に傷ができて汚れが付着しやすくなってしまいます。歯磨きを行う際は、1本1本の歯を適度な力加減(毛先が広がらない程度)で磨きましょう。
着色しやすい食事後はうがいや歯みがきをする
食べ物や飲み物によっては、歯に着色しやすい成分(主にタンニン)が含まれており、それが歯の表面に付着して着色汚れとなります。歯磨きをする時間がなくても口をゆすぐだけでも、口内の色素が薄まり色素沈着を抑えることができます。
クリーニングやホワイトニングを受ける
セルフケアでは落としきれない着色汚れなどは、定期的に歯科医院で専門的な機械を使ってきれいに除去する「クリーニング」をお勧めします。さらに「ホワイトニング」という方法であれば本来の歯の色よりも白くすることも可能です。歯の色が気になる方は、一度歯科医院で相談してみましょう。
まとめ
歯の変色には、歯の表面に色素が付く「外因性」のものと、歯の内部が変色する「内因性」のものがあります。外因性の一つである色素による着色の予防・除去には、毎日の歯磨きが大切です。特に、着色しやすい食事後はうがいや歯磨きを行い、ステインの元を洗い流すことで色素の固着を防ぐことができます。
セルフケアでは落としきれない着色汚れなどは、歯科医院で行うクリーニングがお勧めですが、歯が変色する原因は着色汚れ以外に考えられます。歯の色でお悩みの方は、原因を知るためにも一度歯科医院でお口の状態を診てもらいましょう。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史