歯医者さんで「少しちくってしますよ」などと言われて歯茎の検査をした事はありませんか?あの検査は、歯周病の診断をするためのものです。
歯周病は「silent disease」と呼ばれ沈黙の病気であり、自覚症状のないまま進行してしまいます。日本の成人の70~80%の方は軽度~重度の歯周病であるといわれています。 また、歯周病は感染症であり家族感染(母子)も起こりうる怖い病気です。
今回は、歯周病の診断をするために行う歯茎の検査では、何をしているのかについてお話しします。
目次
歯周病とは?
歯周病(ししゅうびょう)は、細菌の感染によって引き起こされる炎症性疾患で、歯の周りの歯ぐき(歯肉)や、歯を支える骨(歯槽骨)などが溶けてしまう病気です。重度の歯周病になると歯を支えられなくなり、歯が抜けてしまいます。歯周病の怖さは、自覚症状があまりないまま進行していく点です。実際、歯周病になっていても歯周病にかかっていることに気付いていない、という方も珍しくありません。
歯周病の検査項目
歯周病の検査では、「歯周ポケットの深さ」や「歯茎からの出血がないか」、「歯に力をかけた時に歯がぐらついていないか」など様々な視点から検査を行います。もちろん目視で歯ぐきの腫れや色のチェックもします。
●プロービングデプス(歯周ポケットの計測)
歯周病の検査では、プローブと呼ばれる専用の細い器具を使って歯と歯ぐきの境目にある「歯周ポケット」の深さを測定します。 プローブは探す、計測という意味で、お医者さんが使う聴診器の先っぽの部分もプローべと言います。検査は、場合によっては、痛みなどを感じることがあるかもしれませんが、「歯周病の進行状態」を把握する上で、極めて重要な検査となります。歯周ポケットは深ければ深いほど歯周病が進行している状態です。
基本検査(1点法)…簡易的で歯の周囲のどこか1ヶ所(唇頬側のみ、舌側のみなど)を計測します。
精密検査 (6点法)…唇頬側、舌側、および隣接面(頬側よりと、舌側よりにわける)の6ヶ所を測定します。当院では基本全て精密検査を行なっています。
●縁上、縁下歯石の確認
歯石は専門的なクリーニングが必要で、歯科医師や歯科衛生士が特別な器具を使用して除去する必要があります。歯石は、下記の2種類あります。
歯肉縁上歯石(しにくえんじょうしせき):縁上歯石は白色から黄色で歯肉の縁上、つまり歯肉のすぐ上または見える部分に形成される歯石です。比較的簡単に見つけることができます。
歯肉縁下歯石(しにくえんかしせき):縁下歯石は黒色の歯石で、歯肉縁の下、歯肉ポケット内に形成される歯石で、目で見ることが難しい場合が多いです。歯周ポケットの中の磨き残した歯垢(プラーク)と、血液などの成分が結合するため黒くなります。
歯周病治療を行う上で非常に重要な歯石が、黒い歯石である歯肉縁下歯石です。黒い歯石は、歯の根の表面についており、歯周ポケットの奥深くに隠れているため直接見ることはなかなか出来ません。そのため、縁下歯石を除去することは、砂漠の中から宝探しをする程困難であるとも言われています。
●BOP(プロービング時の出血) の有無
BOP(bleeding on probing)とは、歯周病の検査でポケットを測定(プロービング)するとき、出血することです。歯周ポケット検査をした時の歯ぐきからの出血の有無を調べています。この時に出血がある場合は、歯ぐきに炎症があり歯周ポケットの中には歯周病菌が住み着いていることを示しています。他の症状よりも早期に現れるので、炎症を初期のうちに発見することが出来ます。
●レントゲン撮影
骨の吸収や歯周病の進行具合を詳しく観察するために行われます。レントゲンは、歯の根やその周囲の骨の状態を明らかにし、治療計画の策定に役立ちます。
●歯の動揺度
歯の動揺度とは、歯がどの程度動くかを示す指標です。歯の動揺度は通常、上記の図のように分類されます。これは主に歯周病の進行を評価するために用いられますが、事故による外傷など他の原因で歯が動くこともあります。歯周病が進行すると、歯を支える骨が減少し、歯が揺れやすくなります。
●根分岐部病変の有無
根分岐部病変とは根分岐部に歯周病が進行し、歯周組織の破壊が生じた状態をいいます。根分岐部病変は、歯周病の進行度が深刻な場合に起こることが多く、歯のぐらつきや痛みなどの症状が出ることがあります。 根分岐部病変を放置すると、歯を抜かなければならない場合もあります。根分岐部病変の診査法としてはエックス線検査と歯周ポケット測定(プロービング)があります。
歯周病を進行させないために
歯周病を進行させないためには、以下の点に気を付けて歯を清潔に保ちましょう。
適切なブラッシング: 歯ブラシは毛先が柔らかいものを選び、歯と歯肉の境目を丁寧にブラッシングすることが重要です。1日2回、特に就寝前のブラッシングは欠かさないようにしましょう。
フロスや歯間ブラシの使用: フロスや歯間ブラシを使用して、ブラシだけでは届かない歯と歯の間や歯肉の隙間の歯垢(プラーク)を除去します。歯周病予防のために非常に効果的です。
定期的な歯科検診とクリーニング: 3ヶ月に1回程度の定期検診を行い、歯のクリーニングを受けることが推奨されます。定期的な歯石の除去、バイオフィルムの除去が歯周病予防には重要です。
※バイオフィルム…歯垢が口腔内に長時間留まって膜のようになったもの。バイオフィルムの状態になると、歯科医院のクリーニングでないと取り除くのが難しくなります。
食いしばりや歯ぎしりは要注意!
無意識下での歯ぎしりや食いしばりは、成人の約70%以上が行っているともいわれていますが、歯周病の進行に影響を与えることがあります。
歯への過度の力: 食いしばりや歯ぎしりは、歯に異常な圧力をかけ、その結果、歯周組織(歯を支える骨や歯肉)に過度のストレスがかかります。これが続くと、歯の動揺や歯周組織の損傷が促進される可能性があります。
歯周ポケットの深化: 異常な力が歯周病が存在する部位に加わることで、既存の歯周ポケットが深くなることがあります。これにより、歯周病の症状が悪化する可能性があります。
歯の磨耗: 歯ぎしりは歯の表面を磨耗させ、徐々に歯の構造を弱めることがあります。歯の摩耗が進むと、歯周組織もダメージを受けます。 そのため歯周病の進行を促してしまいます。
歯ぎしりや食いしばりの原因の1つとして、上下の歯のかみ合わせが考えられるため歯科医院では、予防として矯正治療を行う場合があります。また、ナイトガード(マウスピース)の作成も行なっています。ナイトガードを装着することで、歯ぎしりや食いしばりによって歯や顎に加わる力を分散させることができます。歯ぎしりや食いしばりにお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
まとめ
このように、歯周病を発症しているかどうかや、その進行度を評価する上で、プロービング検査は非常に有効です。少し「チクッ」と痛い思いをするかもしれませんが、歯ぐきの状態によってはまったく痛みや不快感を伴わないこともありますのでご安心ください。
その他にも歯周病になっていないかを様々なポイントで細かくチェックします。とても重要な検査なので、自覚症状がなくても定期的に受けることをおすすめします。
歯周病ついては、以下でも紹介しています。よろしければチェックしてみてください^^
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史