本来、呼吸は鼻で行うのが正常です。しかし、大人だと7割、子供だと8割の方が口呼吸だと言われています。口呼吸のサインの1つが、テレビを見ているときなどに認められる「ポカン口」です。
口呼吸をしていると風邪をひきやすくなったり、虫歯や歯周病、口臭につながったりなどお口の中だけでなく全身の健康にも悪影響を及ぼします。
今回は、口呼吸を改善するお口の体操「あいうべ体操」についてご紹介します。
目次
あいうべ体操とは?
あいうべ体操は福岡市みらいクリニックの内科医である今井一彰先生が考案した方法です。今井院長は「リウマチの患者さんは口臭が強く、リウマチの炎症がひどくなるほど口臭も強くなる」ということを発見し、口呼吸が健康被害を引き起こしていることに注目しました。
口呼吸をすると口腔内に雑菌が繁殖しやすくなり、その結果口臭も強くなります。口呼吸から鼻呼吸に改善するとお口の中の健康にも大きな効果が得られることから、最近では多くの歯科医院で推奨されています。
正しい呼吸法は「鼻呼吸」
一日の呼吸回数は、約2万回といわれています。正しい呼吸法は「鼻呼吸」ですが、最近では口呼吸の人が多く見られます。鼻で呼吸する人は、細菌を線毛という組織が外へ出してくれますが、口呼吸の場合は、口には細菌を外へ出す機能がないため、息を吸うたびに細菌がダイレクトに体内に取り込まれてしまいます。そのため口呼吸は、さまざまな病気をもたらします。代表例としては、歯周病、アトピー性皮膚炎、ぜんそく、花粉症などのアレルギー性疾患です。
口呼吸だと虫歯や歯周病になりやすい
口呼吸をすると口の中の唾液が乾き、唾液の働きを妨げてしまうからです。唾液の働きには、抗菌作用・殺菌作用があり、虫歯や歯周病を予防する働きもあります。口呼吸をすることで虫歯菌・歯周病菌も殺菌されず、洗い流されることもないため、お口の中にどんどん増えてしまい、虫歯や歯周病といった病気になりやすくなってしまいます。
舌の筋肉が衰えると口呼吸の原因になる
通常、正しい舌の位置は、舌が上あごのくぼみ(硬口蓋:こうこうがい)にピッタリとくっついている状態です。ところが、舌の筋肉が衰えると舌の位置が下がります。これにより、下顎が下がって自然にぽかんと口が開きやすくなってしまうのです。あいうべ体操により舌や口周りの筋肉を鍛えることは、口呼吸の改善につながり、さまざまな効果が得られます。
口呼吸セルフチェック
◉無意識に口が開いている
◉口が乾きやすい
◉唇が荒れている
◉いびきや歯軋りがある
◉朝起きた時に喉がヒリヒリと痛い
◉口臭が強いと感じることがある
上記の項目にひとつでも当てはまる方は、口呼吸をしている可能性があります。
あいうべ体操で口呼吸を改善しよう
あいうべ体操は、舌の筋肉(舌筋:ぜっきん)をはじめ口元の筋肉が鍛えられる体操です。発音練習に似た動作を通じて、顎や口周りの筋肉を鍛えることができます。口呼吸だけでなく睡眠時無呼吸症候群の改善や、美容面での効果など、様々な利点があると言われています。「あいうべ」体操で、舌の位置を元通りにしていきましょう。早い方で3週間、遅い方でも3ヶ月程度で改善するといわれています。
あいうべ体操がおすすめの方
- 口がいつも開いている(口呼吸をしている)
- 何となく疲れやすい、だるい、やる気が起きない
- 手軽に、いつでもどこでも出来る健康法が知りたい
- アレルギー性疾患(花粉症、喘息、アトピー性皮膚炎など)で困っている
あいうべ体操のやり方
あいうべ体操のやり方は、次の4つの動作を順にくり返します。声は出しても出さなくてもかまいません。
1.「あー」と喉の奥が見えるまで口を大きく開けて1秒キープします
2.「いー」と思い切り横に口を広げて1秒キープします。
3.「うー」と唇をとがらせて、大きく前に突き出し、1秒キープします
4.「ベー」と舌を突き出して顎先に向かって1秒伸ばす。
1~4を1セットとし、1日30セットを目安に毎日続けると効果的です。
顎関節症の人やあごを開けると痛む場合は、回数をへらすか、「いー」「うー」のみをくり返してください。この「いー」「うー」体操は、関節に負担がかかりにくいためです。「ベー」がうまくできない人は、大きめのあめ玉をなめて、舌を運動させましょう。
あいうべ体操の効果
あいうべ体操を行うと口呼吸の改善によって様々な効果が得られるほか、顔のたるみ・しわの改善による美容効果、脳の血流をアップさせる効果など、多くの効果が得られます。
インフルエンザなどの呼吸器の病気の改善
まず、インフルエンザなど呼吸器の病気です。実際にあいうべ体操を取り入れて欠席日数が減った小学校、入所者の発熱率が減った高齢者施設などの報告があります。口呼吸は、きちんと異物がろ過されていない空気を体の中に入れ込んでしまいます。これがインフルエンザや風邪の発症に大きく関係しています。また、気道の過敏性が高まり、冷たい空気を吸うことにより気管支が収縮し喘息発作の引き金となることも分かっています。
うつ病などの心の病気の改善
次にうつ病など心の病気です。この中にはパニック障害や倦怠感、慢性疲労症候群なども含まれます。呼吸が自律神経に与える影響は小さくありません。浅く速い呼吸は交感神経を緊張させ、深くゆっくりとした呼吸は副交感神経の刺激となります。口呼吸は浅く速い呼吸になり、鼻呼吸は深くゆっくりとした呼吸になることが分かっています。あいうべ体操で鼻呼吸へと改善することで精神安定にもつながります。
脳の活性化
舌筋には、舌下神経(ぜっかしんけい)が分布しています。舌下神経は脳神経の一つであり、脳に直接つながっています。そのため、舌を動かすことで効果的に脳を刺激し、活性化することができます。
小顔効果
顔の表情筋を動かすことで、表情が豊かになり、顔のリフトアップや小顔効果も期待できます。さらに、顔や首の血行が促進されるため、むくみを解消する効果もあります。
ほうれい線などのしわの解消
顔の筋肉を動かすことで血行が良くなり、肌の新陳代謝が促進されます。これにより、肌のハリや弾力が改善され、しわやたるみが軽減されることが期待されます。
まとめ
あいうべ体操は、どのような年齢の人でも簡単に取り組むことができ、特別な器具を必要としないため、気軽に自宅などで実践することができます。
口呼吸が癖になっており鼻呼吸に改善したいという方はもちろん、あごのたるみやしわなど、アンチエイジングに取り組みたいという方は、ぜひチャレンジしてみてください。
1回だけでなく継続して毎日行うことが大切です。効果を実感できるまで諦めずに取り組みましょう。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史