赤ちゃんは、生後5〜6ヶ月頃から下の前歯が生え始めます。歯磨きをしようといざ意気込んでも、赤ちゃんが嫌がって歯を磨けないということはよくあります。赤ちゃんが歯みがきを嫌がらないようにするためには、歯が生えていない4〜5ヵ月頃からケアを始めることが非常に大切です。
今回は、赤ちゃんが歯磨きを嫌がらないために、歯が生える前と後のタイミングで出来ることや抑えたいポイントをいくつかご紹介します。
目次
歯が生える『前』にできること
この時期の赤ちゃんはなんでもお口に運びたがるので、歯ブラシに慣れるチャンスです!赤ちゃんはおもちゃなどを入れたがりますが口の周りは、他の器官の感覚よりも発達している赤ちゃんにとって、ものを口に入れて確かめるのは自然なことです。口や舌を育てることにもつながるので口に入れて安全なものなら見守りましょう。
1.まずは「あお向け」に挑戦!
膝の上に赤ちゃんをあお向けに寝かせて、赤ちゃんのからだ全体を手のひらで優しくマッサージ。仕上げ磨きの「あお向け」の状態になれる練習をします。無理はせず赤ちゃんのペースに合わせて行いましょう。
2.顔や口元を手のひらでなでなで
赤ちゃんのほっぺを手のひらでなでてみましょう。嫌がる様子がなければ徐々に指のはらで口元を優しくさわります。唇をなぞるようにさわったり、赤ちゃんに心地よく感じてもらえるようになでるのがポイントです。
3.人差し指のはらで口の中を触ってみる
嫌がる様子がなければ、手を洗った清潔な指を口の中に入れてみます。指を使って歯磨きの練習をします。上唇の裏にあるひだ(上唇小帯)をやさしく伸ばしながら反対の手の人差し指のはらで口の中や歯茎をさわりましょう。
赤ちゃんの歯磨きをしやすくするコツ
家族の歯磨きを見せる
家族が楽しく歯磨きをする姿を見せて、赤ちゃんに歯磨きへの興味を持ってもらいましょう。歯ブラシによる喉付き事故防止のため立ち歩かず、座って磨くところを見せるようにしましょう。
歯の絵本を読み聞かせる
歯磨きをテーマにした絵本を読み聞かせて赤ちゃんに歯磨きの楽しさを伝えましょう。初めは虫歯を題材にしたものより、歯磨きで歯がピカピカになる様子や歯を磨く気持ちよさを伝える内容のものがオススメです。
顔を使った遊びをする
「いないいないばぁ」や「あっぷっぷ」など顔を使った遊びは口の周りの筋肉を育てます。口の周りの筋肉がやわらかいと仕上げ磨きをしやすくなります。
歯が生えた『後』にできること
生えたばかりの乳歯は虫歯になりやすく、永久歯に比べて虫歯の進行も早いです。歯が生えたら毎日仕上げ磨きをして歯磨きの習慣をつけていきましょう。歯磨きの時は、赤ちゃんのお口の状態をよく観察して歯の色や形などに少しでも不安を感じたら早めに小児歯科を受診しましょう。
6〜8ヶ月ごろ
唾液の自浄作用により下の前歯は虫歯になりにくいので、この時期に歯ブラシに慣れておきましょう。まずは濡れたガーゼで歯の表面を拭います。様子を見ながら仕上げ磨き用の歯ブラシを少し当てて、感触を伝えます。実際に赤ちゃん用の歯ブラシを使ってみるのも良いと思います。自分で歯みがきをすることに慣れることが目的なので、カミカミするだけでOKです。その場合は、歯ブラシはのど突き防止プレートがついているものを使い、必ずそばで見守りましょう。
10ヶ月ごろ
上の前歯は唾液が行き渡りにくく、一番虫歯になりやすい歯です。上の歯が生えたら歯ブラシを使った仕上げ磨きを始めましょう。歯の表面に歯ブラシを垂直に当てて、ほうきではき出すように小刻みに動かします。前歯の裏は特に念入りに歯磨きしましょう。歯ブラシのヘッドの一番先を使って優しく、手前にかきだすようにように歯1本を5秒ずつで十分です。
1歳ごろ
歯の表面は、歯ブラシを横に当てて小刻みに1本ずつ磨きます。下の前歯の裏は、歯ブラシを縦にして汚れをかきだすようにしましょう。そのとき上唇の裏側にある「上唇小帯」に歯ブラシが当たると痛がるため、上の前歯を磨くときは片方の手で覆うようにガードしながら磨きましょう。上下の両隣の前歯が生えたらデンタルフロスを使うのもオススメです。
仕上げ磨きをするときの3つのポイント
柄が長くペン持ちしやすい角ばったもの
ペンのように持って使うので、柄が長く、角張っていて持ちやすいものを選びましょう。ヘッドが小さくて、ブラシの毛の丈は短めのものがオススメです。
ブラッシングの強さは100〜150g程度
最適なブラッシングの強さは100〜150g程度。大人の爪に歯ブラシを当てて、爪が白くなるくらいの力が目安です。
歯磨き粉を使う場合は少量でOK!
赤ちゃんの時期は、歯ブラシを水で濡らして磨けば歯磨き粉は使わなくてもOK!もし使いたいときは、米粒ほどの少量にしましょう。
「ダラダラ食べ」は虫歯のリスクになる
間隔を空けずに食事をする「ダラダラ食べ」で口の中に長時間飲み物や食べ物が留まっている状態が続くと虫歯の危険が高まります。食事をすると食事に含まれる糖分を餌にして口腔内細菌が酸を作り出します。その結果、口の中が酸性に傾きます。酸性になると、虫歯菌の活動が活発になるため、歯が溶けやすくなります。飲食の頻度が高くなればなるほど、虫歯ができやすい状態になります。
食事とおやつの時間はきちんと決めて、食事の間隔をできるだけ長くすることが、虫歯予防には大切です。赤ちゃんの頃から授乳・食事の時間を決めてお口の中に食べ物や飲み物が残っている状態を減らしましょう。哺乳瓶はコップに比べて口の中に飲み物が留まる時間が長く、飲み物の種類によっては虫歯の原因になります。水分補給はジュースではなく、なるべく麦茶またはノンシュガーの物を選ぶようにしましょう。
家族みんなで虫歯ゼロを目指そう!
虫歯菌は、唾液を通じて親から子供に伝わることがあります。赤ちゃんの歯を守るためにも家族みんなで虫歯ゼロを目指すことが大切です。歯科医院には虫歯ができたときだけでなく、予防のためにも通いましょう。定期的に受診することで自覚症状の乏しい初期虫歯なども防ぐことができます。
まとめ
赤ちゃんの大切な歯を守るために歯が生える前から準備を整えておくと、いざ歯磨きをスタートしよう!という時もスムーズに歯ブラシがお口に入ることを受け入れてもらいやすくなると思います。赤ちゃんのペースに合わせてスキンシップをしながらゆっくりと慣らしていきましょう。
生えたばかりの乳歯は虫歯になりやすく、永久歯に比べて虫歯の進行も早いです。歯が生えた後は、毎日仕上げ磨きをして歯磨きの習慣をつけていきましょう。赤ちゃんの歯やお口の状態に少しでも違和感を感じたら小児歯科を受診してくださいね。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史