オーラルフレイルってなに?

    オーラルフレイルとは?

    オーラルは「口腔」、フレイルは英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源で、「虚弱」や「老衰」などを意味しています。オーラルフレイルとは、加齢による口の衰えで食物を噛んだり飲み込んだりする機能が低下したり、滑舌が悪くなったりするなど、お口に関連する機能が低下しつつある状態の事を指します。加齢による身体の衰え(フレイル)のひとつで早期の重要な老化のサインとされています。

    一般的にオーラルフレイルの始まりは、食事時のむせこみが増えること、硬い食品が噛めなくなることや滑舌が悪くなる等が挙げられます。噛む力が衰えて固いものが食べにくくなると、やわらかいものばかり食べるようになり、噛むために必要な筋力がさらに低下し、さらに噛む力が衰えるといった悪循環に陥りやすくなります。

    その悪循環により口の機能が低下し、滑舌がさらに悪くなることで人や社会との関わりの減少を招いたり、栄養のバランスが崩れて低栄養の状態となることで全身の機能まで衰えてしまい、最終的には要介護状態へとつながってしまう可能性があります。東京大学高齢社会総合研究機構が実施した研究によると、オーラルフレイルによって4年後の要介護や死亡リスクは、健康な人の2倍以上に高まると報告されています。

    オーラルフレイルチェック表

    オーラルフレイルのチェックをしてみましょう。質問に「はい」「いいえ」で答えて書かれている数字を足してください。(何も書かれていない場合は、何も足す必要はありません)

    もし、合計点数が3点以上の場合は、かかりつけの歯科医院に相談してみてくださいね^^

    オーラルフレイルを予防!5つの効果別対策

    【お口や舌の動きをスムーズにする】

    唇やほほ、お口周りや舌の筋力をアップすることで、お口の機能が高まり、唾液がよく出るようになり、舌がなめらかに動いて食べ物を飲み込みやすくなります。

    ◆お口のトレーニング

    「う」の口で唇をすぼめて、「い」の口で唇を横に開く。

    ◆唇とほほの体操

    大さじ1程度の水を口に含んでほほを膨らませた後、すぼめるという動きを数回する。(水はなくてもOKです)

    ◆舌のトレーニング(舌圧訓練)

    1. 舌を左側のほっぺの内側に強く押しつける。
    2. 指で、押し出された舌の先を、ほおの上から押さえる。
    3. 指に抵抗するように、ゆっくり10回舌を押し返す。
    4. 右側のほっぺでも同じこと繰り返す。

    ◆パタカラ体操

    ●「パ」は、口をしっかり閉じて唇を弾くように
    口を閉じる筋肉が鍛えられる事で、口の中の食べ物をこぼさないようにする事ができます。

    ●「タ」は、舌を上あごにくっつくように
    食べ物をしっかり押しつぶしたり、飲み込んだり出来るよう舌の力を鍛えます。

    ●「カ」は、喉の奥に力を入れ、舌の奥を喉に押しつけるように
    弱まると飲み込みが難しくなるため、誤嚥を防ぐためにも大切な発音です。

    ●「ラ」は、舌をまるめるように
    舌をまるめてよく動くようにすることで、食べ物を喉の奥に運び、飲み込みやすくなります。

    各発音 8回を2セット行う。

    ◆唾液腺マッサージ

    唾液腺をやさしく刺激することで、唾液がたくさん出るようになり、食べ物が口の中でまとまり、飲み込みやすくなります。唾液腺マッサージは、「唾液のチカラ」という記事の中でご紹介していますのでこちらからチェックしてみてください。

    【飲み込みの力をつける】

    飲み込みに関連する筋力をアップすることで、食事中の「むせ」などの症状改善につながります。

    ◆開口訓練

    1. ゆっくり大きく口を開け10秒間キープする。
    2. しっかり口を閉じ、奥歯をかみしめて舌を上あごに押し当てて10秒間キープする。
    3. ①と②を3回繰り返す。

    ◆ベロ出しごっくん体操

    舌先を少し出したまま、口を閉じてつばをのみ込みます。(少し出すのがポイントです)

    ◆おでこ体操

    1. おでこに手を当てる
    2. おでこと手を押し合いながら5秒数える。

    ※首に痛みのある方や高血圧の方は避けましょう。

    ◆ごっくん体操

    1. のどに手を当てたまま、顎を少し引く。ゴクッと飲んで、喉ぼとけを上げる。
    2. 喉ぼとけを上げたまま、5秒保つ。できる長さで無理せず行いましょう。
    3. 息を一気にしっかり吐き出す。お腹からしっかりと吐き切りましょう。

    【噛む力をつける】

    噛むパワーをつけることで、食べこぼしや誤嚥を防ぎ、おいしく安全に食べられるようになります。また、唾液が良く出るようになります。

    ◆咀嚼(そしゃく)訓練

     


    ガムを噛むことで噛む力を鍛えます。

    2分間はリズムを決めて、3分間は自由に、計5分間かみます。1日2回(朝と夜)行うのがおすすめです。

    1. 姿勢を正し、唇を閉じてしっかりと噛む。
    2. ガムは1カ所ではなく、左右両側で均等に噛む。
    食事のポイント
    • ひと口で30回以上噛む
    • 口いっぱいに食べ物を詰め込まない
    • ひと口食べるごとに箸を置く
    • 食材は少し大きめに切る、少し硬めにゆでる
    • 歯ごたえのある食材を使う
    • ながら食べをしない(テレビやスマホを見ながら食べない)

    【滑舌を良くする】

    舌や唇などの筋肉を鍛えて口を動きやすくします。滑舌をよくすることで、表情が豊かになりコミュニケーションがとりやすくなります。

    ◆早口言葉
     

    口を大きく動かして、3回続けて声に出して読む。

    • レベル1 なまむぎ なまごめ なまたまご(生麦 生米 生卵)
    • レベル2 隣の客はよく柿食う客だ
    • レベル3 カエルぴょこぴょこ 三ぴょこぴょこ あわせてぴょこぴょこ 六ぴょこぴょこ
    • レベル4 瓜(うり)売りが瓜売りにきて 瓜売り残し 瓜売り帰る 瓜売りの声

    【舌の動きを強化する】

    舌の筋力向上に役立ち、「誤嚥」や「むせ」などの症状改善、予防になります。

    ◆舌トレーニング

    1. 舌をおもいきり出す。舌で下顎の先を触るつもりで伸ばす。
    2. 舌先で鼻を触るつもりで上へ伸ばす。
    3. 舌を左右に伸ばす
    4. 舌先で口の周りをぐるりと一周する。
    5. スプーンなどを舌に押し当てて、その力に抵抗するように舌に力をいれます。右から押し当てる、左から押し当てる、前から押し当てる、など場所を変えて行います。

    まとめ

    オーラルフレイルとは、噛んだり、飲み込んだり、話したりするための口腔機能が衰えることを指し、早期の重要な老化のサインとされています。オーラルフレイルチェック表で現状を確認してみましょう。

    症状が軽い場合は5つの効果別体操で改善することができます。毎日の生活の中でぜひ取り入れてみてください。もし、オーラルフレイルの症状が進行している場合は、かかりつけ医に相談することをおすすめします。健康長寿をかなえるためにも、一緒に歯や口の機能を維持していきましょう。

    記事監修 Dr.堀内 啓史
    堀内歯科医院
    院長 堀内 啓史