歯石は、歯垢が唾液中のミネラル成分などが原因で固まってしまったものです。
歯石そのものに害はありませんが、表面がザラザラしているのでプラークが付きやすくなります。歯石を放置してしまうと歯や歯肉に悪影響を及ぼします。
歯石を放っておくと起こる悪影響には、どのような事があるでしょうか?
目次
歯石を放置すると起きる悪影響
●歯周病
歯石の沈着度と歯周病の進行は、密接に相関しています。歯石が多い程歯周病が進行します。初期の段階では、歯ぐきが腫れ、出血したり、痛みが出たりします。重度歯周病になると歯を支えている骨が溶かされ、歯がグラグラして最終的に歯を失ってしまう可能性もあります。歯周病は、歯を失う原因のトップである怖いお口の病気です。
歯周病は全身の健康にも悪影響を及ぼします
歯周病になると、歯ぐきから出血するようになります。その細菌が腫れた歯茎の血管を逆流し、全身疾患の糖尿病や心臓病、肺炎、ガンや脳梗塞、早産などのリスクを高め全身に悪影響を及ぼします。
●口臭
歯石はザラザラしているので、歯垢が溜まりやすく細菌が繁殖しやすい状態になります。この細菌が発酵することにより、ガスを発生させて卵が腐ったような嫌な臭いになります。
●歯がきちんと磨けない
歯石は、歯ブラシで落とすことができないため、歯石の内側にある歯の表面も磨くことができません。きちんと磨けないことで、プラークが蓄積することにより虫歯になるリスクも高まります。
重症化する前に早めに歯石は取りましょう
歯石による悪影響は、歯周病や虫歯リスクを高めるだけなく、口臭の原因になるなど様々あります。歯石をそのままにしていることで、歯周病を進行させやすくするだけでなく、全身の健康へも悪影響があることがわかっています。しかし、どんなに意識して歯磨きができていても、100%歯石の形成を防ぐことは難しいです。重症化する前に歯科医院での歯石取りがおすすめです。
歯石取りの目安は3ヶ月に1回
歯石取りが一般的に勧められるのは3ヶ月に一度くらいの頻度です。これは、歯石のつきやすさ、歯周病の進行の度合いによって人それぞれです。場合によってはもう少し短い間隔になる事もあります。歯茎を健康に保つためには、できれば定期的に歯石取りを行っていくのが理想です。
以下では、歯科医院での歯石除去の方法についてお話します。
歯科医院での歯石除去の方法
歯石除去には「スケーリング」と「ルートプレーニング」があります。
一般的に歯科医院では、スケーラーと呼ばれる器具を使用しています。歯石の量と場所によって手動のスケーラーと超音波スケーラー(超音波の振動で歯石を破壊する器具)を使い分けて効率的に歯石を取り除いています。
【スケーリング】歯の表面上に沈着した歯石、歯垢除去
スケーリング(scaling)とはスケーラーと呼ばれる器具を使用して、主に歯の表面の歯石を除去する処置のことです。スケーリングを行うことで、歯石や歯垢が除去され、その部位の歯肉の腫れなどの炎症改善、歯茎の引き締めにつながります。
【ルートプレーニング】歯肉縁下の歯垢や歯石除去
ルートプレーニング(root planing)は、歯肉縁下である歯周ポケット内部の歯石や歯根表面の汚染されたセメント質を除去する処置のことです。ルートプレーニングを行うことで、歯根表面をツルツルと滑らかな状態にして、剥がれた歯肉の再付着を促し、かつ歯垢が溜まりにくい状態にします。
※歯周ポケットとはプラークの細菌により歯肉が炎症を起こし深くなった歯と歯ぐきの溝のことです。
【フラップ手術】歯肉縁下の歯石で取りきれない場合の外科手術
歯石が取りきれない場合は、「フラップ手術」が必要になる事もあります。
具体的には、歯肉を必要最小限切開し、付着した歯石を見える状態にし、その除去を行う外科手術です。歯根部を露出させて歯石除去をおこなうので、細部に渡り徹底的に取り除くことができます。
しかし、他の処置よりも時間と体への負担も大きいので「フラップ手術」になる前に、定期的な歯のクリーニングや歯石取りを行う事をおすすめします。
歯の健康を保つために定期的な歯のクリーニングをおすすめします
歯のキレイな状態を保つために定期的に歯のクリーニングに行きましょう。
クリーニングは、普段の歯磨きや歯石取りで取れない、入り組んだ部分の細かい汚れを取る事ができる歯科医院でのケアの1つです。
歯のクリーニングでは、歯の表面を丁寧に磨き上げますので、歯が健康になるだけでなく、歯の着色がきれいに落ち、歯の本来の白さを取り戻せること、そして、口臭をより改善できることも魅力です。
まとめ
歯石をそのままにしていると虫歯や歯周病のリスクを高めてしまいます。そして、歯周病は全身への健康にも影響を及ぼします。歯石が及ぼす悪影響を防ぐためにも歯石取りは大切です。
しかし、溜まってしまった歯石は、自分では取ることはできません。お口の状態が悪くなる前に、3ヶ月に一度は歯科医院で歯石を除去しましょう。また、歯垢のうちであれば除去もしやすので、毎日の歯磨きを丁寧に行う事も大切です。
セルフケアで取りきれない細かい汚れや歯石は、クリーニングや歯石取りにおまかせしましょう。ご家庭でのセルフケアと歯科医院によるプロフェッショナルケアの両立ができれば、歯石だけでなく様々なお口の病気の予防に繋がります。
記事監修 Dr.堀内 啓史
堀内歯科医院
院長 堀内 啓史